なぜ高校生はPythonでつまずくのか――情報Ⅰの現場から
2025年、大学入学共通テストでPythonが出題される時代に
2022年度から、高校の「情報Ⅰ」が全生徒必修になりました。そして2025年からは、大学入学共通テスト「情報Ⅰ」でもプログラミング問題が出題されるようになり、多くの高校ではPythonを使って学習が進められています。
つまり今、日本の高校生は、学校教育の中でPythonに触れる時代になりました。
しかし、その一方で教育現場からは、こんな声も聞こえてきます。
「時間が足りない」という現場の悲鳴
ある高校の情報科教員は、次のように指摘しています。
情報Ⅰのプログラミング内容をプログラミング能力検定の基準に当てはめると、本来はレベル5程度の理解が求められる一方で、授業時間の制約などから、実際にはレベル2〜3程度までしか十分に扱えないケースもあるといいます。
理由は単純です。
情報Ⅰではプログラミングだけでなく、
- 情報社会
- 情報デザイン
- ネットワーク
- データ活用
なども学びます。
限られた授業時間の中で、Pythonに十分な時間を割くことは簡単ではありません。
「土台がない」まま始まるPython
さらに大きな課題があります。
現在の高校生の多くは、小学校・中学校で本格的なPythonを学ぶ機会がほとんどありません。
小学校では「プログラミング的思考」を中心とした学習。
中学校では技術・家庭科の中で限られた時間だけプログラミングを学びます。
そして高校に入ると、いきなりPythonで問題解決を行う授業が始まります。
これは、九九を十分に身につける前に方程式を学び始めるような状況に近いと言えるでしょう。
中学校にも新しい動き
こうした課題は教育現場でも認識されています。
教育系NPO「みんなのコード」では、中学校に「技術・情報」という新教科を設け、小学校・中学校・高校を一貫した情報教育でつなぐカリキュラム案を提案しています。
背景にあるのは、
「高校情報Ⅰの土台を、中学校でしっかり育てよう」
という考え方です。
裏を返せば、現在はまだその土台づくりが制度として十分整っていないということでもあります。
今、教室でできること
制度が整うのを待つ必要はありません。
今、中学生に対してできることがあります。
- Pythonの基本文法(変数・条件分岐・繰り返し・関数)に早めに触れる
- 「情報Ⅰが始まる前」にPythonに慣れておく
- 図形描画やゲーム制作など、楽しみながら続けられる教材で基礎を身につける
情報Ⅰそのものを先取りする必要はありません。
大切なのは、
「Pythonを初めて見る状態」で高校へ進学しないこと。
それだけでも、高校での理解度や学習への自信は大きく変わります。
AI時代のPython教育へ
AIがコードを書いてくれる時代だからこそ、人間に必要なのは「考え方」です。
Pythonは、単なるプログラミング言語ではありません。
問題を整理し、順序立てて考え、AIを活用しながら解決する力を育てる道具でもあります。
だからこそ、高校から始めるのではなく、中学校、できれば小学校高学年から少しずつ親しんでおくことが、これからのAI時代の学びにつながっていくのではないでしょうか。

